マジカルコネクションな日々9 平成最後のライブが富山優子トリオでよかった。

   昨日は神奈川県の藤沢にいた。せっかくの長い休みだし、どこか出かけようかと思い、この時期に出かけるのに最適なエリアである鎌倉に行こう、だったら鎌倉に近い藤沢あたりに宿を取ろうと思ったのがきっかけだった。だけど、ただでさえ人出の多い鎌倉で、連休何だからさらに人出が多いのは容易に想像できた筈なのに、実際行ってみたら狂気の沙汰のように人が多く、天気はイマイチだし、江ノ電は朝8時台の通勤電車みたいだし、海見て、長谷寺に行って、しらす丼食べて早々に藤沢に戻ってしまった。何しに来たんだかわかりゃしない。

    そして、夕方には藤沢から東京の吉祥寺へ向かった。このルートの電車に乗ったことがなく、スマホの検索もうまく行かないこともあって不必要に時間がかかり、吉祥寺に着いたのが19時30分。慌ててタクシーに乗り、今日のライブ会場である「シルバーエレファント」に向かった。一昨年の秋に一度行ったことがあるけど、この店は東京ではプログレッシブロックの聖地のような店であり、僕のようにクリムゾンもイエスジェネシスも好きだけど、ジャンルとしてのプログレに格別の執着がない人間は門外漢もいいところで、ここはてめぇなんかが来るところじゃねぇんだ!と塩を撒かれても文句のいえない店である。しかもプログトウキョウと言うプログレの祭典のようなイベントの最終日で、まさに東京中のプログレ者が集うような日である。本来だったら僕が来るべき理由はどこにもないけど、来るべき理由があった。

   というのも、このイベントの最終日の大トリを飾るのが富山優子トリオだったからだ。名古屋では昨年マジカルコネクションにご出演いただいたけど、名古屋はもちろん、東京でもそうそう観る機会はないから、せっかく首都圏にいることもあってぜひ行っておきたいと思った。富山さんの音楽がプログレかといえば、決してプログレではないと思うし、トリオになってプログレ感が高まるかというとそういう訳ではない。

   もともと富山さんの音楽をジャンルという枠に収めて定義付けようとするのも野暮な話で、キャロルキング直系のピアノ弾き語りのシンガーソングライターという枠では収まらないし、語れない。もちろんプログレという枠で捉えようとしても収まりきれない。ジョニミッチェルがシンガーソングライターという枠で括れないように、富山優子の音楽自体がジャンルになっていると僕は思っている。誰かと同じことをやっている訳ではないし、誰にも真似できない、追従できないオリジナリティがあるから。

    もちろん富山さん含めてトリオの皆さんは卓越した技術と音楽性を持った素晴らしいミュージシャンであるけど、延々とベースソロやドラムソロをするように殊更テクニックを誇示するようなことはなく、歌をうまく生かす絶妙なアンサンブルを聴かせてくれた。富山さんの音楽はピアノとボーカルだけで世界が完成されているけど、それを再構築してバンドのアレンジに仕立ててるんだから見事なものだ。聴きたい曲がたくさん聴けたし、言うまでもないけど、ボーカルも、演奏も素晴らしかった。本当に最高のトリオだ。遠路(名古屋から東京、というよりは藤沢から吉祥寺への距離が遠かった)来た甲斐があった。富山さんは本当に楽しくて仕方がないとノリノリだったし、もちろん僕も楽しかった。

   それと、僕にとって平成最後に体験したライブがこの日の富山優子トリオだった。平成の時代を締めくくる最後が富山トリオで、最後に聴いたのが「僕らの時代」で良かった。富山さん、上田さん、よしじまさんお疲れ様でした。帰りの時間があるので、名残惜しかったけど、皆さんと少し喋ってCD買って店を出た。

    ちなみに富山さんは髪をバッサリ切ってエブリシングバットザガールのトレーシーソーンみたいなベリーショートになってて、アメリカの児童文学に出てくる農園の娘みたいなファッションであった。文章で書いてもよくわかんないか。